NO LIFE, NO WORK.

人生あってのしごと話。

プロボノ「二枚目の名刺」夏フェス2016で感じたこと。

 

プロボノの取り扱うテーマは "都会的" ですね」

 

『二枚目の名刺』が開催した2016年夏フェス、最後のセッションの質疑で会場から出た感想のひとつです。そうなのかもしれません。

一方、プロボノが「都会的」であることを自覚して、次のモデルに拡げていくフェーズに切り替わり始めている内容にもなっていたと感じました。

 

"都会的" なプロボノ

現状のプロボノの主なモデルとしては、「社会課題」に対してそれに取り組む「NPOなどの団体」が核となり、「社会人」がスキルを持って支援を行う、というもの。

NPO」と「社会人(企業)」をつなぐこと(マッチングすること)が、これまでのプロボノ中間団体の主な役割となっています。

 

そういう意味ではたしかに、地方にはプロボノの「核となるNPO」などは少なく、マッチングモデルの提供できる効果は限定的なのかもしれません。

 

これからのプロボノ

『二枚目の名刺』2016年夏フェスから感じた(実際にテーマとして取り上げていたものも含めた)ポイントは3つ。

 

・地方と自治体行政

・ミドル世代

・子ども世代

 

それぞれについて書いてみたいと思います。

・地方と自治体行政

プロボノが、想いのある「NPO」を核として構成することをモデルとするならば、地方のプロボノモデルのひとつは想いのある「行政マン」を核として活動を行うというもの。

つまり、自治体職員として働きながら個人的な想いや熱意を持った行政マンとプロボノを組織するというもの。

現在、地方へ拡大する第一ステップとして、都下多摩地区の自治体との活動を模索しているようです。

ベッドタウン化した多摩地区は、少子高齢化であったり、徐々に産業が撤退していくという社会課題をもった日本の縮図ともいえる。多摩地区は、1970〜80年に急速に成長し、急速に衰退しようとしていて、むしろ日本の課題の未来形でもある。(多摩ニュータウンの急激な高齢化はニュースで取り上げられことも増えてきた。個人的にも自分が多摩地区育ちでもあるので肌で感じるところ)

地方拡大へのステップとしては、多摩地区での行政連携モデルとしてはおもしろいと思う。行政ならではのルールや落とし所、進め方の機微を経験知として、拡大できたらとひとつのブレークスルーが起きるのではないかという可能性も感じました。

ここでちょっと個人的な話を。

自分の本業でここ5年ほど自治体を担当することが多いのだけど、「想いのある行政マン(自治体職員)」というのはたしかに存在する。IT部門に配属されながらも、別にITがやりたくて自治体職員になったわけではない、という特殊性があると考えてるんですが、彼らは一様にシステムの意義の本質を考えているし、そして何より勉強熱心だ。様々な官僚的ルールがある中で、ルールをうまく使いながら、ときにスレスレを狙いながら住民のためになるシステムを作り上げるために腐心している。こんな人たちが役所にいるんだ、自治体を担当し始めた最初は「お役所仕事めんどくさそう…」とか思ってごめんなさい、、と感じたことをよく覚えている。

ITをやりたいからという理由で職業を選んでいないので、技術に走ることも少ない。意味のあるシステムを作ってなんぼの精神で働いている。そういう行政マンがたしかに存在する。

さらに余談になるけれども、象徴的で思い出深いエピソードがあるのでちょっと紹介したいと思う。国からの要請で必要となるシステムを構築しているときのこと。自分(ITベンダ)も自治体職員さんも判断つかないことがあって、国の窓口に確認をお願いしたのだけれども、的を射た回答が得られずいろんな窓口をたらい回しにされてしまった。そのとき担当の自治体職員さんは「お役所仕事しやがってくそー」とグチっていた。そうグチったご本人も思いっきり "役所"の人なんですけどね。。。僕はその人のことがまた大好きになってしまった。想いのある行政マンはたしかに存在する。

 

・ミドル世代

プロボノに関わる40〜50代のいわゆるミドル世代が増えているそう。『二枚目の名刺』の夏フェスでも参加世代の割合が年々ミドル世代が増えているとのこと。今年は会場の感じだと3〜4割に達していたのではないかと感じた。(なお、3年前は1〜2割だったそう)

ミドル世代への拡大をうたったセッションもあったけど、個人的な事象なのか、世代的に共通する要因が何かあるのか、やや問いが残る形に感じた。数字としてミドル世代の関心が高まっていることも事実と思うので、何か世代的な要因はあると思ってるんですが。

(個人的な肌感覚としては「定年後の生活がリアルな視野に入ってきた」「これまでの社会人として培ってきたスキルの棚卸」「若者の若い考え方に触れていたい、学び続けたい」などの要素があるかなと思っているのだけれど、どれが一次的な要因でどれが二次的な要因かは興味があるところ。)

被支援側の社会課題の解決以外にも、支援側のミドル世代への効果も高そうな(セカンドキャリア構築、就労中の精神疾病リスク対策、定年後のコミュニティ確立など)、結構ハマるテーマだと思うので引き続き掘り下げてもらえることが楽しみ(他力本願すみません…)


・子ども世代

最後のセッションは「2枚目の名刺のこれから」というテーマでのパネルディスカッションから出てきた話。

 

パネラーは、ギャップジャパンの人事、『育休世代のジレンマ』著者の2人をゲストとする形で進行。2人とも女性です。

 

「名刺という考え方じたいが男社会的」

「子どもを産んでから様々なコミュニティに属することが増える。1枚の名刺で生きていないという感覚は女性にはすでに当たり前」

といった意見が出ました。

 

すでに1枚の名刺で生きていないというのは個人的にもとっても同感。自分自身も男でありつつ(と前置きするのもほんとうにいやなんだけれども)育休を取って子育てコミュニティに飛び込んだときに同じことを感じました。子どもがいるからというだけが共通項の世界、誰からも命令されない状況で関心事項だけでつながれる世界、そうであるがゆえに各人がもつスキルや文化は多様な世界、その世界で「何かひとつのことをやる」ということ。

これらは主にプロボノで得られる効果を生み出す環境として言われることの多いものだけれども、子どもが生まれたら選択する選択しないに関わらず、いわゆる「プロボノ」的な環境に飛び込んでいる女性は多いと思います。

 

話を子どもに戻します。

 
「街の落書きをなくしたい」


二枚目の名刺代表のお子さんが発した言葉。何となしに何かよくしたいことある?と訊いたときの言葉で、そんな問題意識を持っているとは思いもしなかったので驚いた、というエピソードとして語られました。

 

子どもは大人が思っている以上にいろんなことを考えている。できるできないを大人が勝手に決めて、できることだけやらせてはいないか。できることだけをやらせて失敗する経験をさせられていないのではないか。成功も失敗も含めて自分の取り組みたいことを取り組む経験をさせられていないのではないか。

 

「どんどん失敗してほしい。多種多様な価値観の中で居心地の悪いと感じながら本当のパフォーマンスを発揮する経験をしてほしい」
二枚目の名刺のプログラムを人材育成プログラムとして実施することを目前にしているギャップジャパンの人事のかたはこう語っていました。

「既存のルールに疑問を投げかけること(ような本を出したこと)は怖くなかったか?という感想が多く驚いた。失敗しないように失敗しないように大きくなった大人が多いのではないかと感じた。子どものうちから失敗しながら試行錯誤することが重要と考えるようになった」
『育休世代のジレンマ』を書いた著者はこう語っていました。

 

子どもの教育というテーマもありつつ、子ども自身も課題解決に参画していくモデルは非常におもしろいと思う。可能性を感じます。

 

共通テーマ「自分ごと」

以上、これからのプロボノを考える上で重要な3つのテーマがイベントでは取り上げられていたと思います。その中であえて共通するテーマを挙げてみると「自分ごと」ということなのではないかと思います。

 

自分ごととして取り組みたいテーマは何なのか?

どうやって自分のものにするか?

いかに自分ごととして活動に取り組むか?

 

一方で、自分ひとりでは何もできないわけで、、「"自分ごと"をどうやって"みんなのもの"にするか?"相手自身のもの"にするか?」という観点も次のステップとしては必要になってくるんでないかと考えています。

 

これは、オープニングセッションでのラグビーの日本代表主将を務めた人の話からも通じるものを感じました。南アフリカに勝利した話は2015年にたいへん盛り上がったトピックであると思いますが、その舞台ウラの話でした。

南アフリカに勝てるチームはいかに作っていったか?という話として聞き入ってしまいました。試合最後にトライを選択して逆転勝利したエピソードは、チーム作りの過程がなければ絶対にありえないシチュエーションだと思わされました。(監督の指示はペナルティキックで同点狙いだったが、チームで反対してトライにチャレンジすることを決定したそう。)

 

大義が一番重要。大義をいかに共有できるか。

メンバーのことをお互いに知り、各自が貢献できる強みを組み合わせることができるか。

メンバー自身の存在をただ尊重して、メンバーが自分の居場所と思える場所を作るか。

 

「メンバーにはあいさつがてら昨日何したかとか、何がおもしろかったかとか、世間話を毎日する」人として接して、人となりを知りながら、居場所を作っていく。
「何のためにラグビーをやっているか?何のために試合に勝つのか?」大義が重要。そこがブレたら練習は手抜きになる。

などの話が印象的でした。

 

本来的には、仕事でもそうだと思います。本業・本業外に関わらず、プロジェクトやチームで本当に意味のあることをしようと思ったら必要になることだと思います。 

 

最初から「自分ごと」があり、やらずにはいられないような大義があったのなら、そもそも勤め人なんてやっていないという人もいるだろうし、万人が自身の大義から活動を立ち上げる必要があるとも思いません。

 

個人的に、プロボノに感じる可能性はここにあって。改めて感じている可能性をここに書いておきます。

 

誰かの大義の熱に触れたりして、大義が伝染していくこと

 ↓

自分のものと思える大義に出会えること

 ↓

大義のために自分のスキルや時間を使うこと

 ↓

必要なものに自覚的になり自分のスキルをさらに磨くこと

 ↓

自分の残せたものや自分自身の変化や成長を感じながら、自分のものと思える人生を作っていくこと

 

こんな流れが多くの人に起こるんじゃないか、というところにプロボノへの可能性を感じるんだなぁ、ということを改めて胸に刻みました。

 

おしまい。

 

***

 

会場入り口近くに設置されていた子どもコーナー。

今年は下の子同行で若干不安もありましたが入ってすぐに馴染んだ息子(3歳)。父さんの方は、片耳半分ながらも講演を聞くことができました。よかったよかった。午後も子どもコーナーに吸い込まれて熱中した息子。最終セッションではまるまる昼寝しまして、抱っこしながらの観覧スタイルにw ともあれ最終セッションまで参加することができて感謝です。ありがとうございました。

スタッフさんとスタッフさんのお子様と思われるお姉さんが対応してくださいました。まさに「子どもの参画」の実践。

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