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人生あってのしごと話。

イクメン議論がすれ違う1つの理由~キャズムで見る「男性の育休」

 
個人的に、働き方と生活を考えるきっかけになった、育休。
 
男性の育休については、2010年のイクメンブーム着火後、さまざまな場所で言葉をイクメンを見かけるようになりました。いまや、「イクメン」の用語認知率は90%を超えたとか。(2012年 マクロミル調べ
男性育休の当事者として、この3年間のイクメン議論を、ときにアイデンティティを賭けるかのように、ときに距離を置きながら見てきました。
 
そうして気付いたことがひとつ。男性の育休も、結局はキャズム理論に乗るんじゃないかなー、という話です。
 

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イノベーター層

正規の育休は1%台。まだまだイノベーター層。
(※正規の育休・・・育児介護休業法に則った申請を伴う「育児休業」のこと)
 

アーリーアダプター

一方、会社や組織によって個性があり、男性も育休取得率が5%や10%にまで達している会社もある。
社会全体とは少し異なる空気の中で、正規の育休を取得していくアーリーアダプター層。
 

アーリーマジョリティ層

正規の育休ではないが、隠れ育休(有休など別の形をつかっての育児休暇)や、なんらかの勤務調整をした人もいる。『隠れ育休など約46%』という調査もあり。(2011年 ファザーリング・ジャパン調べ
育児のためになんらかの生活の調整をした、というアーリーマジョリティ層。
 
正規の育休うんぬんに限らず、「男性が育児をする」ということについては、2010年のイクメンブーム着火が間違いなくキャズムを超えさせたと言っていいでしょう。男性も育児をする、を一言でポジティブ化した意味で。この功績は大きい。また、正にも負にも全方向的にインパクトを与えています。
 

レイトマジョリティ層

「育休を取りたい(もし、取ることに何も障害がなければね…)」という男性は7〜8割いるとも言われている。(2013年 ライフネット生命調べ)現実の1%台との差が激しいけれども、ここが潜在的な男性の育休対象者層。
つまり、意識だけでみればレイトマジョリティ層まで到達している。
 

ラガード層

「男性の育休を義務化したらどうか?」という意見は、イクメン議論ではたびたびよく見るアイデアなんだけれども。
実際に義務化するとどうなるか?というと、最後のラガード層まで到達。
 
取るモチベーションは「仕方なく」。
 
休んで何をするか(いや、育児なんだろうけれども)までコントロールできなければ、それ以外の好きなことをするのは避けられない。
男性の育休取得率が80%を超えるような北欧では、サッカーシーズンに育休がっつりあてて観戦に行っちゃうなんていう人がいるらしく、ちょっとした問題になっているらしい。自分の目で見ていないので真偽のほどはわからないけど、ありそうな話ではある。人間の意欲、行動パターンとして。
 
 

ーー イクメン議論するときに意識したいこと

男性の育休をキャズム理論になぞらえて、何を言いたいかというと、
議論する際に、どの層のどのフェーズを見ながら、その人は話をしてるのかを意識するのがすごく大切ってこと。
 
どの層にも違う課題があるし、違う対策がある。それらをごっちゃに話をするとすぐに議論がねじれる。
「これをやるべき!」「いや、こっちが大事!」というのは、たぶんどちらも正しくて、どちらも必要。ただ単に、必要としている層とフェーズが違うだけなんだと思う。
また、「いやいや、そんなことできる状況なんかじゃない!」というのも、その層での現実であることには違いない。実際に、そう感じる人がいるのだから。
 

ーーおさらい。キャズムといえば、iPhone。スマホ普及の過程となぞらえて

2007年にiPhoneが生まれた。アメリカまで買いに行ったのがイノベーター層。
 
2008年に日本上陸時に、ケータイ2年縛り契約などはもろともせず、飛びついたのがアーリーアダプター層。
 
2009~2010年に、2年縛りの契約更新などのタイミングに合わせてゲットしたアーリーマジョリティ層。
 
2011〜12年にかけて各社こぞってスマホ投入したときに、いよいよ手にしたレイトマジョリティ層。
 
2013年、ガラケー機種がほとんどなくなっても使い続けるラガード層。(きっとガラケーが絶滅するまで、使ってるケータイが壊れるまで使い続ける。)
 
荒い説明で、厳密な説明についてはケータイ業界の人に譲りたいけど、そんなイメージ。
 
2007年当時にiPhone欲しければアメリカまで行くしかない!っていうのはイノベーター層の意識構造。正直ハードルは高い。iPhoneの数倍もする渡航費をかけて、万人が買いに行くわけない。でも、この層が飛びつかなければ波及していくことがないのも事実。iPhoneというものが、どれだけすごくて便利なのかが世に広まらないから。
 
スマホの種類が爆発的に増えたように、何ごとも広まっていけば多様性が出てくる。
 
男性の育休も、隠れ育休や定時帰り、在宅勤務など、男性の育児という意味では多様になってきている。コストパフォーマンスが良いものを各自がいろんな形で選んでいく。「コスト」は金銭面だけでなく、心理的コストも含めて。各自のコストパフォーマンスが良いものを選ぶ、それで良いんじゃないか。
 

ーー 気を付けること。キャズム理論に乗せて語るときの条件

これから流行りそうなもの、主流になりそうなもの、なんでもキャズム理論に乗せることができると思う。例えば、ノマド、スタートアップ、SNS、などなど。
そこでチェックするべきは、「大多数の人がそれを望んでいそうか?」ということに尽きると思う。一部のニッチなニーズなのか、みんなが手にしたいと思っていながらも手を出せていないものなのか。
自分が手にしたい、正しい、と思うものが、大多数も同じように思っているかどうかは、冷静に考える必要がありそう。
 
男性の育休についても、本当に必要なものならば、本当に大切なものならば、時間とともにキャズム越えの流れは進んでいくのではないでしょうか。
 
 

男性の育休、今あなたは、どの層のどのフェーズに関心を持っていますか?

2013年8月31日(土)、夜22時からツイッター上で「男性の育休」をテーマにタグ上でおしゃべりをします。3年前から有志で関わっている活動、ワークライフバランス・カフェの企画です。ハッシュタグは、 #WLB_cafe 。当事者どうしの意見、知識の共有を主な目的としています。
 
 今回は、朝日新聞ソーシャルAとのコラボ企画。当事者コミュニティとマスメディア、おしゃべりが双方へ流せる取組みを行います。
 
*参加の仕方や詳細は、こちらのエントリーを。
 
*2010年にも「男性の育休」をテーマにおしゃべりしたことがあるので、参考までにご紹介します。
 
正直、3年前と同じ意見はたくさん出ると思う。言ってもそこまで劇的な変化は起きていないかな、というのが3年のあいだ当事者をしてきた肌感覚。でも、「今の」気持ちから出てくる言葉を改めて聞きたいし、向き合いたい。
そして、たくさんの「変わっていない」の中で、少しずつ「変わってきている」ものも確実にあり、変化に積極的に目を向けるようにしたいと思っています。